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第17回 入院中、むし歯で食事できない

訪問診療で治療可能

質 問
入院している父の歯が何本も虫歯になって折れ、食事ができずに困っているようです。 元気な時は定期的に歯科医院に通い、口の手入れをしていましたが、今は通院できません。どうすればよいですか?


回 答
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徳島県歯科医師会
阿部 昭人
第17回 入院中、むし歯で食事できない
訪問診療で治療可能

家族の方が入院され、心配/苦労がおありでしょう。まずは入院先の主治医に現状を説明し、歯科治療を受けられる状態か、またどの程度の治療が可能かを相談して下さい。次に以前通っていた歯科医院に訪問診療(往診)の相談をしてみてください。最近は多くの歯科医院が訪問診療に対応しています。かかりつけの歯科医院が対応していない場合は、県歯科医師会が在宅歯科診療連携室〈電080(2987)4838〉を開設していますので、気楽に連絡・相談してください。

歯科治療の訪問診療は、医師が持っていける機材の制約や患者の状態など、処置にいろいろ限界はありますが、緊急に痛みを取り、食事ができるように機能を回復することは十分に可能だと考えられます。同時に口腔ケアも行うことができます。自分の口で食事ができることは生活の質(QOL)を高め、栄養状態も改善し、生きる力の源にもなるはずです。

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「8020運動」は、80歳になっても自分の歯を20本以上残そうという運動ですが、大切なのは歯の数よりきちんとおいしくかんで食事ができるということです。

80歳の人を対象にした面白い研究結果を紹介しましょう。介助なしで日常生活を送ることができるグループと、できないグループに分け、堅焼きせんべい、たくあん、タコやホタテの乾物といった15食品のうち、食べられる食品の数で分類・検証した研究です。

それによると、日常生活の活動能力や要介護者の割合と歯の数には関係が認められず、むしろ咀嚼能力と関係があると分かっています。

つまり、咀嚼能力を高めれば、要介護度を改善させられる可能性があることを示唆しています。病気になったり、介護が必要になったりすると、どうしても口腔ケアが困難になります。口腔ケアが不十分になると、体力や抵抗力の落ちた人は誤嚥性肺炎の危険性が高くなります。厚生労働省が6月に発表した統計によると、日本人の死因は多い順にがん、心疾患、肺炎、脳血管疾患となりました。長年4位だった肺炎が、半世紀ぶりに3位になりました。肺炎は90%以上が百歳以上が65歳以上の高齢者で、誤嚥性肺炎が問題になっています。高齢者の場合、飲食物の誤嚥だけでなく、知らないうちに起こる唾液の誤嚥が大きな影響を及ぼしていると考えられています。誤嚥性肺炎の病原菌の多くは歯周病原性細菌であることも知られています。つまり肺炎に対しては、咀嚼・嚥下機能の回復と口腔内を清潔にする口腔ケアが大きな予防効果があるということです。訪問診療の際は、家族にも患者の口腔内を見て現状を知ってもらい、口腔ケアに協力していただくと大きな効果があります。自分の口で食事がき、口腔ケアも行い、生きる気力を高めて早く元気になってください。