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第21回 悪い歯並びと顎の突出

矯正治療と手術併用

質 問
妊娠4ヶ月です。つわりがひどく、歯磨きのできない状態が続いています。
口の中が気持ち悪くて歯茎がむずむずすることもあり、虫歯ができてしまうのではと心配です。どうすればよいですか。


回 答
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徳島県歯科医師会
川上 慎吾
第21回 悪い歯並びと顎の突出
矯正治療と手術併用

正治療は通常、顎の成長のコントロール(顎の移動)と歯の移動で進めます。しかし、成長を終えた人は顎の移動を行えないため、主に歯の移動で歯列不正を治療します。状態によって歯を大きく移動させるときは抜歯も必要ですが、あまりにも上下の顎のずれが大きくて歯の移動だけでは治療が困難なきがあります。このような症状は顎変形症といわれ、上下の顎のずれを外科手術で改善し、正しいかみ合わせ(咬合)にする治療を行います。

外科手術を併用する矯正治療を外科的矯正治療といいます。顎変形症には、上顎前突(出っ歯)、下顎前突(受け口)、開股(上下の歯が全くかみ合わない)があります。質問のケースは下顎前突で、日本人に多く、外科的矯正治療を行う症例の中でも多数を占めます。質問のように、小さいときは歯並びだけの問題であっても、顎変形症の傾向があると、身長が伸びている間に顎骨がそれに比例して成長し、顎のずれがどんどん悪化します。ある程度成長してから歯科医院にかかるため、矯正治療の開始時期が遅くなり、外科的矯正治療を行う場合が多くなります。

外科的矯正治療の流れは ▽術前矯正治療 ▽外科手術 ▽術後矯正治療 と、大きく三つのステップに分かれます。おおよその治療期間は、それぞれ ▽1~2年 ▽(入院期間)2週間~1ヵ月 ▽6ヵ月~1年 ですが、症状や手術方法によっても違います。

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左列は下顎前突の歯並び㊤と顎。右列は治療後


また手術は、単なる歯列不正や咬合異常などの治療、咀嚼発音機能の回復にとどまらず、審美的な面に関する治療も含まれることがあります。入院や手術は、受診する矯正歯科医院の関連病院で行われます。手術は全身麻酔で行われますが、全て口の中で行われるため傷跡が残る心配はありません。

術後から退院までの期間は個人差がありますが、退院後は通常の生活を行うことが可能です。食事の際にやや堅い物がかみづらかったり、口を大きく開けづらかったりしますが、約3カ月で手術前の状態に戻ります。

矯正治療費と手術費は全て健康保険が適応されますが、歯科矯正診断施設基準に適合した医療機関に限定されています。保険適応を希望の場合は、基準に適合した歯科医院をお選び下さい。