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第35回 う蝕とフッ素応用について

日本では局所使用のものが中心

質 問
「海外ではむし歯の予防のために水道水にフッ素を添加しているという話を聞きましたが、日本では行われているのでしょうか?
また、それ以外にフッ素を用いた方法はどのようなものがありますか?」


回 答
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徳島県歯科医師会
多田 雄一郎
第35回 う蝕とフッ素応用について
日本では局所使用のものが中心

今日、各種メディアにてフッ素を応用した虫歯予防について取り上げられています。ここではまず、フッ素がどうして虫歯予防に効果があるか、からご説明いたします。 まず1つ目に、フッ素には虫歯菌の酵素のはたらきを抑制して、歯を溶かす酸を作らないようにすると同時に、虫歯菌が歯にくっつきにくくする効果があります。

2つ目に、フッ素には歯の表面のエナメル質を修復し、硬く丈夫にして虫歯の予防効果を高める、という効果があります。

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これらの効果を期待して、ご質問のように諸外国の多くの自治体がフッ素の化合物(フッ化物)を上水道中に添加し、多数の住民を対象として虫歯を予防する手法をとっています。

わが国におきましても、ごく一部の自治体にて実験的に導入されておりますが、導入については様々な議論がなされていた、という歴史があります。というのも、水道水にフッ化物を添加することで、歯の変色・変形、永久歯の発達障害、また全身への悪影響が起こる可能性があることが報告されていたためです。

もちろん、導入している諸外国の自治体はそれぞれ適正なフッ化物の水道水内の濃度調節を行っておりますし、WHO(世界保健機関)やFDI(世界歯科連盟)は水道水へのフッ化物の添加を承認・推進しておりますが、わが国におきましては現時点では安全性の面から実際に導入する、というところまでには至っていないと考えられます。 以上のことから、歯科におけるフッ素の応用は局所使用のものが中心となります。方法としては、ご質問にありますように大きく3つに分けられます。

1.フッ化物配合歯磨剤
ブラッシングが習慣として定まっているわが国においては最も一般的とされる方法です。歯磨剤のフッ化物濃度は1000ppm以下と規定されており、歯ブラシの毛先につけるくらいの使用量であれば問題ありません。しかし、子どもが好みやすい風味をつけていたりするので、大量に食べたり飲んだりしないように管理することが必要です。

2.フッ化物洗口(うがい)
フッ化物洗口は、フッ化物水溶液を頻回ぶくぶくうがいをすることによって、萌出後の歯に直接フッ化物を作用させる方法です。市販のものも販売されておりますが、学校において、公衆衛生として集団単位で実施されている自治体もあります。比較的低濃度(225~900ppm)であるため、万が一飲み込んでしまっても全く問題ございません。

3.フッ化物歯面塗布
フッ化物歯面塗布は、萌出後の歯に直接フッ化物溶液を塗布する方法で、歯科医師と歯科衛生士(専門家)だけができるものです。萌出間もない歯に行うのが効果的と言われておりますので、可能であれば乳歯が萌出してから定期的に年2回以上の塗布を続ける必要があります。しかしこの方法は、使用する溶液のフッ化物濃度が9,000ppmと高いので、安全性の観点から、歯科医師などの専門家が原則として医療機関において対処しなければなりません。

どちらの方法が最も効果的、というのはございませんが、併用することでより予防効果は高まると考えられています。

ただし、フッ素による虫歯の予防効果は、あくまでも補助的な役割です。日頃のブラッシングを含めたセルフケア、歯科医院でのプロフェッショナルケアによるプラークコントロールがより重要です。