default_mobilelogo
 

第31回 金属アレルギーの予防

口の中の清潔感を保つ

質 問
37歳の既婚女性です。久しぶりにピアスを着けると、耳が赤く腫れてかゆみが出だし、皮膚科で金属アレルギーを指摘されました。
考えると、口の中には虫歯の治療で、金属の詰め物がたくさんあります。金属アレルギーの原因になると聞いたので治療したいのですが、どのように治療するのですか?


回 答
p31-kume
徳島県歯科医師会
久米 康之
第31回 金属アレルギーの予防
口の中の清潔感を保つ

皮膚や粘膜には異物の進入を拒否する防御反応があります。この反応のことを一般的にアレルギーと呼び、アレルギーの原因物質のことをアレルゲンといいます。

金属アレルギーでは、金属そのものがアレルゲンになるのではなく、金属から溶け出した金属イオンが体内のタンパク質と結合することによってアレルゲンに変化し、皮膚炎や粘膜炎などの症状を起こします。

金属アレルギーを起こす可能性のある金属として、アルミニウム、コバルト、スズ、鉄、白金(プラチナ)、パラジウム、マンガン、インジウム、イリジウム、銀、カリウム、クロム、ニッケル、亜鉛、金、銅、水銀などが考えられます。これらは汗などの体液によって少しずつ金属イオンが溶出し、アレルゲンへと変化してしまいます。


歯の詰め物として使用する金属以外の素材*

素 材 長 所 短 所
レジン 基本的に即日で完了し、健康保険が適用される 変色する
プラーク(歯こう)が付きやすい
耐久性が低い
ハイブリッドセラミック レジンに比べ変色しにくい 多少変色する
セラミックより耐久性が低い
基本的に健康保険適用外
セラミック ほとんど変色しない
摩耗に強く耐久性に優れている
清潔感が高くプラークが付きにくい
極度に強い衝撃を与えると壊れることがある
基本的に健康保険適用外
*素材の一般的な特徴を記載。口の状態によって変わる場合がある


金属を身に着けた人全てが、金属アレルギーを発症するわけではありませんが、女性の場合、長期にわたってピアスやネックレスなどの装飾品を身につける機会が多いため、金属イオンと結合したタンパク質との遭遇の機会が多くなります。

この原因物質を身体がひとたび異物と認識してしまうと、次回の侵入を防ぐために体が記憶(感作(かんさ))します。一度感作されると、次に同じ金属を装着した時に金属アレルギーの症状が出てしまいます。また、他の金属でも発症したり、金属が触れた部分以外の皮膚や粘膜にも湿疹やただれなどの症状が出るなど、症状が重くなっていくこともあります。

ご質問の中にもあるように、口の中にも歯科治療によりニッケル、コバルト、パラジウム、水銀などの金属が使用されています。歯科治療に関与する金属アレルギーの予防には、日頃から口の中を清潔に保つことが重要になってきます。重度の歯周病や口内炎などで口の中の炎症状態が慢性的に続いているような環境などでは金属がイオン化しやすいという報告もあります。

口の中に金属の詰め物があり、粘膜のただれなど歯科金属によるアレルギー発症が疑われる場合は、原因となる金属を特定する検査(パッチテストと呼ばれています)を行い、原因金属の除去を行います。その後、詰め物として使用する材料はレジン、ハイブリッドセラミック、セラミックなど金属以外のものになります。表1のようにそれぞれ長所・短所がありますので、かかりつけの歯科医院でご相談ください。