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第23回 歯の外側が痛み、臭う鼻水

歯が原因の蓄膿症か

質 問
40代の女性です。数カ月前から鼻の左外側が痛み、頭痛もします。時折、臭いの強い黄色い鼻水が出て、周囲の人目が気になります。数年前に左上の奥歯を治療しました。
現在は治療を中断していますが、今でもその歯は強くかむと痛みます。鼻の症状と関係があるのでしょうか。


回 答
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徳島県歯科医師会
奈良井 聡
第23回 歯の外側が痛み、臭う鼻水
歯が原因の蓄膿症か

歯と鼻の意外な関係から生じる病気に、歯性上顎洞炎があります。ご質問の方はこの症状にほぼ一致しています。

鼻の奥は、上奥歯の根っこから頭部にかけて骨の中に空洞があります。上顎洞炎とは、そこに炎症が起こっている状態です。蓄膿症という病名の方が一般的かもしれません。

原因はほとんどの場合、鼻の粘膜の炎症ですが、奥歯の虫歯や歯周炎から上顎洞に細菌が侵入して起こる歯性上顎洞炎も1~2割を占めます。特に成人の一側性(左右のどちらか一方)の上顎洞炎は、 歯が原因の可能性が高くなります。

上顎澗炎(慢性)の一般的な症状は頭重感、頭痛、頬の痛みと紅潮、臭いの強い鼻汁などがありますが、歯性上顎洞炎の場合はそれらに加えて、原因となった歯をたたくと痛みや違和感が多くみられます。治療を放置した病悩期間の長い、歯性上顎洞炎を含む慢性上顎洞炎は、時に症候性(仮性、続発性)三叉神経痛の原因となります。

検査は、医科医療機関でのX線単純撮影や、歯科医療機関でのパノラマX線撮影で行います。特に、歯性上洞炎における原因歯と上顎洞の位置関係は、パノラマX線撮影で比較的正確な情報が得られます。

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歯性上顎洞炎の患者のC丁画像。
写真上部の突出した部分が鼻。
空洞は黒く写るが、鼻の右下は炎症を起こしていてやや
白くなっている

また、粘液嚢胞(嚢瘤)、膿瘍、真菌感染、腫瘍性病変などの疑いがある場合や、単純X線写真だけで診断が難しい症例では、CT撮影を行うことがありますが、造影剤を使うことはほとんどありません。比較的苦痛の少ない検査ですので、耳鼻咽喉科や歯科(口腔外科)での早めの検査を勧奨いたします。

治療は、歯性上顎洞炎の場合は上顎洞炎の治療と虫歯治療を一緒に行う必要があります。歯性上顎洞炎における上顎洞の治療としては、以前は上顎洞根治手術が盛んに行われていましたが、最近ではマクロライド系の抗菌剤の長期少量投与が初期治療で、一般的に用いられています。

しかし、感染の原因となった虫歯や歯周病をしっかりと治すことが肝要です。歯の治療は、上顎洞の炎症がひどいときや歯の状態が悪いときには、やむなく抜歯をすることがありますが、可能な限り歯を残すことを目指した、歯の神経の治療(根管処置)が行われます。

一度、歯科(口腔外科)か耳鼻咽喉科を専門に扱っている医療機関で担談なさってはいかがでしょうか。