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第22回 保険診療と自費診療

機能や審美性に違い

質 問
20代の女性です。上の前歯が大きく欠けてしまい、かぶせる治療が必要となりました。 保険を使って白い歯が入れられるそうですが、天然歯に近い材質のよいものが自費治療でできるとも聞きました。詳しい違いを教えて下さい。


回 答
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徳島県歯科技工士会
大下 弘
第22回 保険診療と自費診療
機能や審美性に違い

歯科診療には、保険診療と、自費診療があります。一般的に「保険を使うと治療費が安く、自費診療だと高い」といった認識をお持ちの方も多いと思いますが、保険診療と自費診療の違いは費用だけではありません。保険診療は基本的に必要最低限の治療に限られており、使用する材料や治療方法、あるいは治療回数や期間など細かな規定があります。これに対して、自費診療は自由診療とも呼ばれ、いろんな治療方法や材料を使います。より高い機能や審美性、生体親和性、耐久性などに配慮した治療が行われます。

保険診療で入れる前歯の白い差し歯(レジン前装金属冠)と、自費診療によるメタルポンドクラウン(陶材焼付鋳造冠)を例に、違いを説明します。

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自費診療でのメタルボンドクラウン。金属のフレームに白いセラミック材を焼き付けている


どちらもまず、印象材という材料を使って口腔内の型を取ります。保険診療ではアルジネート印象剤と寒天印象剤を用いるのが一般的ですが、自費診療では寸法精度や安定性に優れているシリコンラバー印象剤を主に使用し、より精密な型を取ります。

次に、型に歯科用石こうを流し込み、模型型を流し込み、模型を作ります。歯科用石こうには普通石こう、硬石こう、超硬石こうなどがあり、自費診療では寸法精度の高い模型を製作するために超硬石こうを主に使用します。この模型で患者のかみ合わせに適した金属フレームの原型をワックス(ロウ)で作り、これを鋳造して金属に換えます。

通常、レジン前装金属冠に用いる金属は金属バラジウム合金で、鋳型には石こう系埋没材を使用しますが、自費治療のメタルボンドクラウンの場合は、特殊なものを使います。

十分に研磨した金属フレームに白い部分を患者の他の歯と調和した大きさ、色、形態にして、研磨をして完成となりますが、治療部への装着の際に歯科医師が微調整することが少なくありません。レジン前装金属冠の白い部分には歯冠用硬質レジン(歯科用プラスチック)を使用しますが、歯冠用硬質レジンは変色や摩耗など経年変化を起こすこともあり、天然歯のような色調や強度は期待できません。しかし、金属冠(銀歯)ほど目立たず、歯の裏側を金属にすることで強いかみ合わせにも耐えることができます。

一方、自費診療のメタルポンドクラウンの場合は、金属のフレームに白いセラミック材を焼き付けて作ります。長い歴史と実績があり、天然歯に近い色調を再現することができ、耐久性も優れています。

近年では別の材質も徐々に普及しています。金属のフレームを使わないものは、歯や歯茎の変色、金属アレルギーなどが起こる可能性が極めて低く、審美性や耐久性に優れていますが、いずれも保険は適応されません。 保険診療ではほとんどの歯科治療を受けることができ、使用する材料の安定性も国で認められていますが、将来にわたって健康な歯を守るという視点で考え、治療方法を選択することをお勧めします。