default_mobilelogo
 

第13回 インプラント治療

欠損部にチタンを埋め込む

質 問
最近、インプラント治療という言葉をよく耳にします。
その治療を受けたいのですが、どのような治療で、どんな注意が必要なのか教えてください。


回 答
p13-mori
徳島県歯科医師会
森 直基
第13回 インプラント治療
欠損部にチタンを埋め込む

インプラントとは人工歯根のことです。約40年前にスウェーデンで開発され、その後、世界中で使用されるようになりました。現在、日本国内で認可されたメーカーは30社以上あり、年間約50万本が患者の口腔内に埋め込まれています。国内の全歯科大学にインプラント科が設立されるなど、インプラントは歯科治療法の一つとして確立されています。

虫歯や歯周病、事故などで歯を失ったとき、従来の治療法ではブリッジか取り外し式の入れ歯しかありませんでした。ブリッジの場合は固定式なので装着感は良いのですが、失った歯の両側の歯に金属などをかぶせるため、それが健康な歯であっても削らなければならないというデメリットがあります。

一方、取り外し式の入れ歯の場合、異物感が強く、なかなか慣れることができなかったり、歯茎に傷ができ、何度も調整が必要になったり、食べ物がよく挟まったりするという欠点があります。これらの問題を解決してくれるのがインプラント治療です。

p13
インプラントを埋め込んだ歯茎の断面図
インプラント治療では、歯の欠損した部分の骨にチタンでできたインプラントを埋め込みます。チタンは金属アレルギーの治療にも使われる生体親和性の高い金属です。これに金属やセラミックでできた歯冠部分をかぶせます。条件によっては全く自分の歯と見分けがつかないくらいにすることも可能です。もちろん、物をかむという歯の本来の機能も当然のことながら回復することができます。

このほか、顎の骨が痩せてしまって安定の悪い総義歯を固定するにも、インプラントは使われます。

しかし、インプラント治療にはデメリットもあります。埋入には外科処置が必要な上、保険適応外治療なので治療費が高額になります。

また最近は、インプラント治療をめぐるトラブルが報道されています。100%成功する治療法とは言えませんが、失敗例のほとんどは、歯科医と患者のコミュニケーション不足から起こっているようです。インプラント治療を希望する患者は、審査、診断、治療計画、費用の見積もりを受け、治療内容を確認し、同意した上で治療を受けるべきです。自分と同様の歯の治療例を見せてもらうのも良いでしょう。セカンドオプションとして、インプラント以外の治療法を聞くことも大事です。

インプラント治療だけで歯科治療が完結するわけではなく、あくまで治療のオプションの一つです。派手な広告や雑誌の宣伝をうのみにし、安易に治療を受けるのではなく、自分に合う治療法や歯科医院を患者自身が選ぶことが大切です。

インプラント治療後は必ず定期検診が必要です。体は日々変化し、それに応じて口腔内の清掃方法も違います。患者自身が毎日適切な方法で自分の歯とインプラントをメンテナンスし、歯科医院で定期的に検診とプロのメンテナンスを受けることが、治療を継続的に成功に導く最良の方法です。

「自分の歯でかむ」のは大切なことです。最近の研究では、自分の歯でかまないと心臓疾患や認知症、肩凝り、糖尿病など、全身に悪影響を及ぼすことが報告されています。インプラント治療は「抜く」「削る」といったマイナスの治療から、良い歯が増えるというプラスの治療を行う画期的な治療法です。

適正な治療を受け、安心しておいしくご飯を食べることができれば、健康的な生活を過ごし、生活の質( Q O L )を上げることができるでしょう。